ZBLLマスターへの道 〜覚え方と練習方法〜

目次

 

この記事はSpeedcubing Advent Calendar 2021 3日目の記事です。2日目の記事はカレメオンさんの「PLLのCP読み講座」でした。4日目の記事はPさんの「CFOPの新しいルート開拓のための一試案」です。

 

こんにちは、うえしゅうです。

最近暇だったのでZBLLを328手順覚えてみました。328手順というのはSuneとAnti Sune以外の全てのZBLLケースです。9月辺りから本格的に覚え始め、10月の終わりには全て回せるようになりました。

今回は僕がZBLLをどうやって覚えたか、どのように練習をしたか、などを話していこうと思います。この記事が今後ZBLLを覚える人の役に立てれば幸いです。

 

ちなみに手順の覚え方についてはキルミーしぶやさんが書いた記事があります。本記事と似通ったところはありますが、そちらも参考にしてみてください。

キルミーしぶやさんの記事→九九さえ覚えないレベルの暗記嫌いがいかにしてOLL57手順を覚えきったか

 

ZBLLを覚えた理由

僕がZBLLを覚え始めたのは今年の9月半ば辺りからです。もともとUcaseとTcaseは2/3ほどマスターしており、一応覚えたけど実践ではあまり使えてないなといった状態でした。

ZBLLを覚えるきっかけとなったのはTymon Kolasińskiの動画です。Tymonは前々からZBLLを実践のソルブで使っていましたが、その頃上げていたFast Fridayの動画シリーズでZBLLを使って4秒や5秒を出しているのを見て自分もこんな風にかっこよく解きたいなぁと思いZBLLに取り組むようになりました。

また、同時期にFeliksがGAN12のソルブ動画を上げており、その動画内で5回中3回もZBLLを使っていてそれに感化されたというのもあります。

 

ZBLLを覚えようと思ったもう一つの理由は、漫然とキューブを解くのに飽きてきたからというものです。

コロナ禍で大会もオフ会もなくなりただキューブを解くだけのことに飽きてきていて、この1年はキューブを回さない期間が数ヶ月はあったように思います。その中で、このままでは自分は本当にキューブをやめてしまうかもしれない、キューブをやめたら自分には何も残らなくなる気がして怖い、とさえ思いCNやZBLLなどの新しいことに積極的に挑戦するようになりました。

今年の目標に「キューブを続ける」ということを掲げていましたが、どんどん新しいことに挑戦することでキューブモチベはある程度保たれていたかなと思います。

 

自分のZBLL手順表

僕のZBLL手順表はこちらです→uesyuu’s ZBLL algorithm

Juliette SébastienのZBLL表をHarris/Baum systemの順番に並べて、自分の使っている手順を赤く色づけしてあります。

大体はJulietteの手順のうちのどれかですが、いくつかは別のサイトやまさどる君の手順を拝借したり自作したものを使ったりしています。

 

自分のZBLLの練習方法

僕のZBLLの練習方法は以下のステップで行いました。

  1. ZBLLのCP判断基準を決める
  2. Juliette SébastienのZBLL表をコピーして自分のGoogleドライブに入れる
  3. ZBLL表の特定のOLLケースのCPが同じパターン12手順を、Harris/Baum systemに基づいて順番に並べる
  4. 並べ終わったら、手順表やAlgDB、SpeedcubeDBなどを見て自分に合う手順を吟味する
  5. 手順が決まったら、上から順に手順を回してその手順がどんなチャンクで構成されているかを確認する
  6. その手順の最初の数手をHarris/Baum systemのブロックと強引に意味付けをする
  7. 大体覚え終わったらZBLL TrainerのRecapモードで練習し、手順表を見なくても正解できるまで続ける
  8. 数日間そのCPケースのZBLLをTrainerで練習し、朝一番の練習で手順表を見ずに全正解できたら次のCPケースに取り掛かる
  9. 3〜8を繰り返す

一つずつ説明します。

 

1: ZBLLのCP判断基準を決める

ZBLLを判断するにはまずCP判断基準を決める必要があります。僕の判断基準は以下の通りです。

UTLPiH

U, T, Lについてはこの判断面が最適だと思います。なぜなら、ソルブ中に一番良く見えるR面とF面に側面色が多く配置されており判断に使える情報量が最も多いためです。

 

2: Juliette SébastienのZBLL表をコピーして自分のGoogleドライブに入れる

現時点で一番最新のZBLL手順が載っているのはJuliette Sébastienのスプレッドシートだと思います。Julietteは完全なZBLL使いの中では最も速い公式タイム(avg 6.40)を持っているため一番信用できると思われます。一つのパターンにつき複数の手順が載っていたりするので選択肢が豊富で使いやすいです。スプレッドシートのトップに「コピーして使ってね」と書いてあるのでコピーして自分のドライブに入れましょう。僕の手順表もJulietteのコピペです。

 

3: ZBLL表の特定のOLLケースのCPが同じパターン12手順を、Harris/Baum systemに基づいて順番に並べる

ZBLLの判断についてはHarris/Baum systemが最強です。ペアの位置や対面色ペアの位置で判断する方法もありますが、CPケースごとに判断基準を作らないといけないというデメリットと、そもそもその方法では判断が不可能なケースがあるためHarris/Baum systemをベースにすることをおすすめします。そのうえでペアの位置を補足的に判断に使うのはいいと思います。

Harris/Baum systemについての詳細はこちら→ZBLLの判断方法 - coffee01

ちなみに僕はHarris/Baum systemの12ケースの順番を以下のような順番で並べています。

C/C, C/O, C/A, O/C, A/C, O/O, O/A, A/O, CxC, OxO, CxO, OxC p>

 

4: 手順表やAlgDB、SpeedCubeDBなどを見て自分に合う手順を吟味する

頑張って良い手順を探しましょう。Julietteの表にもともと手順がいくつかありますが、手に合わなければAlgDBSpeedCubeDBを見て吟味しましょう。それでも納得できなければCubeExplorerksolveといった手順探索ツールを使って自作するという最終手段もあります。

 

5: 上から順に手順を回してその手順がどんなチャンクで構成されているかを確認する

ZBLLというのは大体が2〜4個の短いアルゴリズムの組み合わせでできています。この短いアルゴリズムというのは色んなZBLL手順で出てくるため、これを色々覚えておくことでZBLL手順への理解がしやすくなります。

記憶術では意味のない数字などの羅列をある小さいグループに区切って覚えることを「チャンクに分ける」と言うそうです。そのためここではよく出る短いアルゴリズムのことをチャンクと呼ぶことにします。

記事後半でZBLLによく出てくるチャンク一覧を掲載しておくので、覚えるときの参考にしてみてください。

 

6: その手順の最初の数手をHarris/Baum systemのブロックと強引に意味付けをする

ここがめっっっっちゃくちゃ重要です!

手順だけ覚えてもそのパターンの判断と結び付けられなければ全く意味がありません。手順を実践で使うにはパターンを見てどの開始面からどのような手順を回すのかを一瞬で思い出すことが必要です。

僕が行ったのは、例えばあるCPのHarris/Baum systemにおけるO/Cの手順であれば、Cのペア(つまりRU-RFU)が手順の最初のチャンクによってどう移動するかを強引に意味づける、といったことです。例えばU rightswap O/Cの手順は

画像手順
U2 R U2 R' U R U R2 D' r U2 r' D R2 U' R'

ですが、このCのペア(RU-RFU)が最初のチャンク「U2 R U2 R'」によってFRスロットに入るんだな〜、入らないと違和感が激しいな〜、という意識を頭の中に焼き付けるのです。そしてそのチャンクがきっかけとなって実際の手順を想起することができます。

O/AやA/Oのように対面色ペアしかない場合はその対面色ペアをどう動かすかに紐付けます。CxOとOxCについては隣接色ペアしかないですが、CxOのFU-RFUにあるねじれ同色ペアをペアとみなしてそれがどう動くかに紐付けています。

C/C、O/O、CxC、OxOといったペアがない、もしくはペアしかない場合はHarris/Baumのブロック以外にペアがあればそれをキーにします。なにもない場合は、、、気合で紐付けるしかないですね。

 

7: ZBLL TrainerのRecapモードで練習し、手順表を見なくても正解できるまで続ける

CPの同じ12手順が大体頭に入ったら、ZBLL Trainerで練習をします。ZBLL Trainerには通常モードとRecapモードがあり、通常モードは選択されたZBLLを永遠にランダムに出すだけですが、Recapモードは選択されたZBLLを一通り全てランダム順で出題してくれます。なので覚えた12手順をRecapモードで練習し、全正解するまで続けるといった練習になります。

 

8: 数日間そのCPケースのZBLLをTrainerで練習し、朝一番の練習で手順表を見ずに全正解できたら次のCPケースに取り掛かる

覚えた12手順は大体次の日になると8割方忘れます。なのでとりあえず朝イチでTrainerのRecapモードで一回しし、8割9割正解できれば次のCPケースに進みます。5割も答えられなければその日はその12手順をとにかく練習し次の日にまたRecapを回します。これの繰り返しです。

僕の場合は1日目に手順を覚え、2日目はだいたい忘れているので練習をし、3日目には8割以上正解しているから次のCPケースに進む、といった流れで進められました。

また、CPの同じ12手順を覚えきったと思ったとしても次のCPケースを練習している途中にどんどん忘れていってしまうことは必ずあります。なので、Ucaseを取り組むのなら今覚え中のCPケースとすでに覚え終わったUcaseのCPケースも一緒に練習しましょう。最終的にはUcase全て覚え終わり全72手順をTrainerのRecapモードで回して全問正解できればUcase合格です。

 

ZBLLを覚えるコツ

ZBLLを練習している中で、覚えやすくするためのコツをいくつか感じたので紹介します。

 

似通った手順はなるべく避ける

手順吟味のステップの際の話ですが、同じOLLケースで似たような手順があると判断時に混乱してしまいます。例えば、

画像手順
Pi backswap O/O: (U') R' U' R U' R' U R U' R' U R' D' R U R' D R2
画像手順
Pi frontswap OxC: (U') R' U' R U' R' U R U' R2 D' R U R' D R U R

この2つは同じPi caseでRUD手順でしかも最初8手は全く同じ動きです。最初覚えようとしたときにどっちがどっちかわけわからなくなってしまいました。そのため、このような激似の手順がある場合はどちらかを別手順に切り替えることを強くおすすめします。僕は後者の手順を変えました。

 

手順の関係性を叩き込む

ZBLLはその手順だけでなく逆手順、裏手順、裏の逆手順も別のZBLLケースの手順になることが多いです。そのため手順を覚えるときに「この手順はあのケースの逆手順なんだな〜」と追加情報を頭に入れるとより頭に残ります。

記憶術でも言われることですが、その記憶に対して付加情報を知れば知るほどその記憶は強固になるようです。一つのZBLL手順に対してこういうチャンクでできているとかあのケースの逆手順であるとか、色んなイメージを持つことが頭に残す上で大事なんじゃないかと思います。

 

CPケースごとに復習したり、同じHarris/BaumケースをCP順に回したりして縦と横の繋がりを頭に入れる

練習の仕方としてはCPケースごとに12手順を回していくのが基本です。そして、例えばUcaseを全て覚え終わったとしたら同じHarris/BaumケースのCP違いの手順を回して縦の繋がりを確認するのも有効な練習法だと思います。

実際にZBLLを実践で使ってみてわかったんですが、COを見てCPを確認するより先にHarris/Baumの2×2ブロックを確認してしまうことが割と多いです。そのため、2×2ブロックを確認して手順を6つまで絞り、その後でCPを確認して判断し手順を回すといった流れになることを考えると、Harris/Baumケースの繋がりを覚えておくことは非常に大事になってきます。

 

間違えたり思い出すのに時間がかかった手順はもう一度復習する

CP12手順や1case72手順をTrainerのRecapで回したときに思い出せなかったり判断に10秒以上かかったりするケースはあると思います。そういうときには必ず復習をしましょう。そのためのタイム計測ですから。

復習をするときは、チャンクの確認、Harris/Baumブロックとチャンクとの意味付けの確認、を重点的に行いましょう。

 

実戦で出てきたら必ず回す

絶対です。絶対に回しましょう。回さないと全く練習になりません。

公式大会で回すのは流石にハードルが高いとは思いますが、トリコンくらいであれば回したいですよね(願望)

 

ZBLLによく出るチャンク一覧

ZBLLには同じようなチャンク(短いアルゴリズム)が多数出現します。頻出英単語みたいなもんです。これを事前に覚えておけば手順への理解が確実に早くなります。

大体が簡単なWinter Variationになっています。

また、これらの逆手順もチャンクになっています。

画像手順備考
R U2 R'U2で入れるただのスロットイン
R U R' U' R U' R'スロットインとAnti SuneがキャンセルしたWV
R' F R U R U' R' F'スレッジハンマーと6手OLLのキャンセル
R' F' R U2 R U2 R' FなんかU2多くて嫌なやつ
R U' R' U R U2 R'RU系のガシャガシャやるやつ
R' U' R2 U' R2 U2 Rあえて裏スロット出して前入れ裏入れのやつ
F' R U2 R' U2 R' F RなんかF’のやつ
R2 D R' U' R D' R2なんかコミュテーターっぽい動きのやつ
R2 D R' U2 R D' R2なんかコミュテーターっぽい動きのやつその2
R' D' R U R' D Rただのコミュテーター
コミュテーターとRU系の動きの組み合わせはめちゃくちゃあります
R' D' r U2 r' D RCOEO全部揃ってるSummer Variation(SV)
R U' R' U' R U' R'簡単SV
R' D' R U R' D R2 U R'コミュテーターとスロットインの組み合わせ
割とよく見る
R' D' r U2 r' D R2 U' R'まさどる君直伝のチャンク
まさどる手順に頻出

 

ZBLLを覚える順番

ZBLLに手を出してみたいけどどれから手を付けていいかわからない、という方には僕はUcase対角をいつもおすすめしています。理由は判断が簡単なのと回しやすい手順が多いからです。

もしくは先にTcaseを覚えるという手もあります。TcaseはEO+ZBLLを使うときに必ず使うZBLLであるため、色んな用途に使えるコスパのいいcaseだからです。Tcaseの対角はCOLLですら良い手順がないためこれを先に潰すのもありです。

また、UやTの無交換は手順は簡単でとてもいいのですが、全ての手順がRU系で構成されているためごっちゃになりやすいという欠点があります。そのため初めに覚えるZBLLとしてはちょっとレベルが高いかなと思います。

UやTを覚えきってまだ覚えてみたいという人はL, Pi, Hに手を出してみてもいいでしょう。PiとHについては必要かが疑問視されているところはありますが、個人的には判断に慣れれば全然実用的ではあるかなと思います。

 

おわりに

この2ヶ月でZBLLをギューッと詰め込んでみましたが、結構実践でも使えていることに自分でも驚いています。判断込みでsub3できるZBLLも多くなってきていて、もっと練度を上げればほぼ全てのZBLLが実用的になるんじゃないでしょうか。

ZBLLが本当に必要かどうかは僕にはわかりませんが、ZBLLを使ってsub8をかませればかっこいいソルブになることは間違いありません。

みなさんもZBLLの沼に足を踏み入れてはいかがでしょうか?